特定非営利活動法人  アーシャ=アジアの農民と歩む会
 
 

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 アーシャ派遣現地プロジェクト調整員 町上 貴也


「人間という自然と対峙して」

 これから3年間のアラハバードでのプロジェクトの大きな目標。それは農村で人々が学びあうことができる場所を作る、ということです。 過去これまで農村で有機農業普及や保健プロジェクト、学校運営など様々な形で継続教育学部はアラハバードの農村に関わって来ました。しかしこれからは継続教育学部のスタッフが教えるだけでなく、農民たちがお互いに教えあい、学びあう、そんな場所を農村に作る段階になりました。

 アラハバードの農民は僕にとって一筋縄では理解できません。村の中での協働作業にはいまだに強い結びつきがある。しかしプロジェクトになると途端にわがままになり自分しか見えなくなる。目先のことしか考えない。そのわりにもし困った事があると途端に泣きついてくる。もしくは開き直って怒り出す。

 そんな彼らと協働の意味を考えるとき、どうしても僕の自分の考えを疑わざるを得ません。みんなで働こうとプロジェクトを執行しながら、自分の描く共同体のイメージが間違っているのではないか。明日の事も考えないで毎日笑っている農民を見ながら、自分はなぜ農村の未来にこれほど重きを置くのか。毎回セミナーに遅れてくる農民を尻目になぜこんなに自分は時間に執着するのか。自分が思う人への思いやりや人との距離の取り方。すべての考え方の違いが僕の育った環境、考え方を浮き彫りにします。

 そんな事を考えていると、結局いろいろな事が分からなくなってきます。ふと油断していると農民の生活が正しいのかもしれないとまで思ってしまいます。でも農村の人たちが人間本来の姿に近いとしても、農民も僕も程度の差こそあれやはり中途半端な人間です。自然にいまだに哀愁を持ち、その一方で人工の生活にどっぷりつかっている。その中で揺れ動きながら今日的な経済、文化的な諸問題と向き合っています。 そんな中で僕が信じる事ができるのはやはり自分の中にある自然でした。感情と呼ばれる僕の中に沸きだすもの。確かな光。

 これから農民の人たちが協働する姿を見られるようにプロジェクトを実施します。農民、そして農の中の自然を理解し、彼らが村のために、隣人のために、そして自分の家族のために何か今までと違うことをしてみようと思い、そしてこれまでに学んだ知恵を出し合う。それはどんな感情の動きによって現実に立ち現れるのか?

 「助け合う」「協力し合う」この言葉の裏に隠されているもの。その意味を見つけるためにこの3年間が始まります。農民はまたナマステーとこのオフィスにやってきます。軒には仲たがいやなじり合いもあるかも知れません。農民理論に絶望するときもあるかもしれません。しかしそれを丁寧に解きほぐしながら、自分の内なる自然に耳を傾け、理解するように努め、そしてお互いに学んでいく。成長していく。僕にとってもこの3年間は勉強です。そして3年後に農民が農民学校とよばれる場所で何かをお互いに始めているとしたら、その時僕の中の自然に起こる何か。それが確かにあるはずだと信じてこれからもアラハバードでがんばりたいと思います。

 最後になりますが、アーシャ会員の皆さま、そして支援していただいている各団体の関係者の皆さまのおかげで、こうして毎日面白い仕事、そして生活ができたことを心より感謝いたします。


【町上貴也 経歴】 現地調整員
 2004年 明治大学建築学科卒業
 2005年 ニュージーランドでWWOOFをしながら一年滞在
 2006年 名古屋NGOセンター研修Nたまプログラム受講
 2007年 アジア学院広報ボランティア
 2008年 ボランティアとしてアーシャよりインド派遣 
 2009年 職員として活躍
 2012年 任務を終え帰国

 

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