北インド農村女性の自立支援のための
手工芸品マーケティングシステムの確立と生産・技術能力向上事業

公益財団法人生協総合研究所のアジア生協協力基金の助成を受けて「北インド農村女性の自立支援のための手工芸品マーケティングシステムの確立と生産・技術能力向上事業」を2019年4月から実施しています。

農村女性のエンパワーメントを目指すNGO アーシャ・ヴィカス・セワ・サミティ(AVSS)の縫製部門をカウンターパートとして、手工芸品のマーケティングシステムの構築、縫製技術・デザインおよび生産能力の向上、農村女性の裁縫技術の持続的な養成・教育システムの構築を目的として活動を実施しています。

【マーケティングシステムの構築】

インドと日本において、フェアトレード商品の手工芸品の拡充、取扱店の開拓と通信販売の促進、イベントでの出店販売を通したフェアトレードの広報、オーダーメイド商品の受注活動など、マーケティング目標を達成するシステムの構築を推進しました。

インドでは、デリー、ムンバイ、バンガロールにおいて手工芸品の需要調査を行い、商品開発のヒントを得ました。一方、日本では、栃木県・東京都・埼玉県で取扱店の開拓、栃木県・埼玉県・千葉県・北海道・宮城県で開催されたイベントなどでの出店販売を行いました。その中で、商品の共同開発や商品アイデアの提案を受けました。

インドでは、2020年3月下旬、コロナ感染拡大によりロックダウン令が施行され、移動・集会は規制されました。その中で、地元で市場調査を行ったところ、医療機関で防護服やエプロン、薬局ではマスクの需要があり、商品の開発・生産を行いました。

インドのコロナ感染が拡大する中で、最も弱い立場にある貧しい農村の住民、その中でも子どもや女性を守るため、日本で「マスクを届ける募金」を実施しました。多くの皆様にご支援いただいて集まった募金を使用して、基礎裁縫教室を修了した農村女性がマスクを製作し、アーシャ学校の生徒や先生、事業地10か村の低所得家庭の子どもや女性にマスクを配布しました。

2021年5月、コロナ感染の第2波が急拡大しましたが、感染予防を徹底しながら、現地の専門家から縫製とデザインの指導を継続して受けて、商品開発を促進しました。ショッピングバッグ、古着を利用したパッチワークベッドシーツ、刺繍ブローチ、刺繍マスク、ワイドパンツ、パジャマパンツ、サルワルパンツ、マルシェバッグなど多種多様の商品を開発し、既製品のスカートの改善も行いました。また、デリーのイベントでの出店販売、ウェブサイトの開発、パンフレットの作製も行いました。

 

日本でも、コロナ感染拡大の影響を受けて、栃木県のみで感染予防を徹底し、イベントでの出店販売を続けました。さらに、ネットショップ「ASHA STORE」を開設して手工芸品の販売を開始し、商品カタログも充実しました。

 

【縫製技術・デザインおよび生産能力の向上】

縫製技術・デザインおよび生産能力を向上するため、2019年7月から2か月間、プロフェッショナル研修コースを実施しました。このコースでは、縫製員を目指す研修生4名に対し、工業用ミシンの使用方法、既存商品の縫製技術の指導を行うとともに、AVSSの縫製員4名を加えて、日本から派遣した縫製技術・デザインの専門家より指導を受けて、既存商品の技術的な見直し、新商品のデザインとバリエーションの開発とその製作を実施しました。これにより、縫製の質は向上し、日本市場が求める品質水準に近けることができました。また、縫製員である先輩研修生が全ての縫製技術・デザインを習得し、分担して後輩研修生を指導することで、効率よく技能習得が進み、先輩研修生は製作と指導の両面で自信を付けることができました。

2020年も縫製技術・デザインの専門家の派遣を計画しましたが、コロナ感染拡大のため見送り、オンライン研修で商品のバリエーション開発を行いました。しかし、様々な課題に直面しました。2021年に入ってもコロナ禍でインド渡航は通常に戻らず、日本の縫製技術・デザインの専門家の派遣は断念しました。そこで、現地の縫製技術・デザインの専門家から指導を受けて、6か月間の研修コースを実施しました。その中で、様々な商品開発とその技術指導が継続して行われました。

 

【農村女性の裁縫技術の持続的な養成・教育システムの構築】

AVSSの縫製事業を継続する縫製員を確保するため、農村女性の裁縫技術の持続的な養成・教育システムとして、農村での基礎裁縫教室の運営を支援しています。マキノスクールから35~40㎞離れたハルディー村、カンジャサ村、マイダ村にある建物で行われ、基礎裁縫教室の卒業生が教師として教えます。卒業した農村女性は、基礎的な縫製技術を習得し、伝統服や子ども服を作ることができるようになります。

2020年1月から3月、マイダ村の農村センターにて基礎裁縫教室が開催され、3月末に試験を予定していました。しかし、直前に、コロナ感染拡大によるロックダウン令が施行されて実施できず、2020年10月まで延期されました。40名が登録し、23名が合格しました。この内、2名をAVSSのインターンとして受け入れて、商品の縫製技術を指導しました。

2021年11月から2月、ハルディー村の農村センターにて基礎裁縫教室が開催されました。43名が登録し、9名が合格しました。この内、7名がプロフェッショナル研修コースに進みました。

 

2022年は助成事業の最終年度として、AVSSの自立した運営の体制作り、マーケティングシステムの質の向上、日本向け主力商品の開発・改善を推進しています。

マーケティング、受注、生産、検品、販売など重要な役割を担う人材の育成、上級技能を必要とする輸出向け・都市向け商品を生産するグループと洗練されていなくとも地元で販売できる商品を生産するグループの編成による幅広い人材の活用により、体制の強化を目指しています。

マーケティングは、日本とインドにおいて、ウェブサイト、SNS利用のオンラインマーケティングを拡充し、商品開発へフィードバックします。また、地元の販路開拓に努めています。日本向けの主力商品は、日本の縫製技術・デザイン専門家に、商品開発とサンプル提供を委託し、その成果を元に、地元の縫製技術・デザイン専門家の指導を受けて、インドの都会や日本で販売できる上級技能を身に着けていきます。